なぜ賃貸マンション経営において法人が活用されるのか?

最近は賃貸マンション経営において法人を活用される方が増えてきました。今回のコラムでは賃貸マンション経営において法人が活用される理由について税理士の視点からご説明いたします。

簡単に法人の設立が可能

以前は法人を設立する際に一定数以上の役員や株主が必要であったこと、また設立時に株式会社の場合には資本金として1,000万円以上を準備する必要がありましたが、平成18年の会社法改正により役員及び株主は最低1人以上、また資本金も最低1円以上となったため非常に簡単に会社を設立することが可能となりました。

節税効果が限定的な従来の方法

賃貸マンション経営における法人活用ですが、従来は集金代行業務やサブリース(転貸)など不動産の所有権は個人に残したまま、法人が管理を行う形態が一般的でした。しかしこれらの方法において法人が個人から徴収することができる管理料は世間相場が基準となるため少額になることが多く法人への所得移転が十分に機能しないため、節税効果も限定的となります。その結果法人を維持管理するための費用負担と比較して十分な効果を得ることができないケースも多くありました。

法人活用の目的は個人累進税率の緩和

本来法人を活用しての節税対策は、個人に集中する所得の一部又は全部を法人に移転することで所得分散を図ることを目的とします。所得分散を行う理由は、個人の不動産所得が累進課税により15%~55%(所得税・住民税の合計)の範囲で課税されることとなるため、個人の所得税率が高い場合には法人へ所得移転することで累進税率を緩和することが可能となるためです。この場合法人へ移転する所得は多い方がより効果が大きくなるわけですが、集金代行業務やサブリースなど管理等を行うだけの形態では十分に所得を移転することが困難であるため、最近の不動産賃貸における法人活用の傾向としましては建物自体を法人が所有する方式が多くなっております。

法人不動産所有のメリット

建物所有方式の場合には建物所有者である法人にすべての家賃収入が入ることとなるため最も所得移転の大きい対策方法といえます。また法人は親族を役員とすることで、当該親族に対して役員報酬を支払うことができます。法人から適正額の役員報酬を支払うことで法人の損金算入が可能となるとともに、会社を通じて役員報酬という形で不動産の所得を親族に分散することで所得税の累進税率が緩和されます。さらには次世代の方々に役員報酬を支払うことで、資産の次世代移転が実現しますし、長期的な見地から相続対策としての効果を生むこととなります。個人において同一生計親族に対し給与を支払う場合には事前に税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要がありますが、専従者給与はあくまで労働の対価となるため、実際に仕事をした業務量に応じた金額しか支給することはできません。しかしながら役員報酬は役員としての経営の対価となりますので、専従者給与と比較して報酬を支給しやすい環境となります。

法人不動産所有のデメリット

なお法人で建築した場合のデメリットとしましては、不動産の所有者が法人であることから、個人のように建築と同時に相続税評価額が大幅に圧縮されるような相続税対策の効果はありません。相続対策を目的として瞬間的な評価の引下げを狙うのであれば個人の建築が効果的ではありますが、相続発生まで一定の期間があるような場合には毎年の所得税の節税効果や長期的に見た財産移転による相続税の節税を検討する必要があります。

賃貸マンションにおける法人活用は、対策時の不動産オーナーの年齢や対策目的により効果は大きく異なることとなりますので、対策の実施を検討される場合には事前に必ず専門家にご相談するようにしてください。

松原 健司

税理士法人FP総合研究所 代表理事・CEO 税理士